森山 安英

Yasuhide Moriyama

北九州市八幡に生まれた森山安英は、1960年代後半に前衛芸術運動「集団蜘蛛」を主導したアーティストである。彼の活動は徹底してラディカルであり、既存の芸術概念や社会規範を覆す試みとして知られる。

1960年代初頭、先行する前衛美術グループ「九州派」の強い影響を受けながら、1968年に地元作家たちとともに「集団蜘蛛」を結成し、まもなく3人のメンバーに少数精鋭化。当時の前衛芸術運動や左翼的な文化活動さえも否定し、あらゆる既存の枠組みを挑発的に壊すことで独自の表現を模索した集団であった。森山自身も、山中でのホームレス生活、マッチ箱に糞便を詰めて商店街で配布するゲリラプロジェクト、交差点の中心でのパフォーマンス、さらには著名作家の作品を模倣するなど、芸術と社会の境界を曖昧にする行為を繰り広げた。その活動は、純粋な創造行為というより、制度や権威に対する挑戦としての側面が強い。

1970 年、福岡県立伝習館高校の教師処分に反対する運動に参加し、公然猥褻物図画陳列罪で逮捕され、裁判闘争は1973 年まで続いた。その後、15 年の長い沈黙を経て、1987 年から銀一色の絵画作品の制作を開始し、現在に至るまで大量の絵画作品を残してきた。初期作品は、全面銀色のオールオーバーな抽象絵画で、絵の具を流し込む技法が特徴であり、その後2000 年以降は、豊富な色彩やかたちの具象的絵画を主に制作している。

1997年には福岡市美術館で「集団蜘蛛の軌跡展」が開催され、森山の活動が再評価された。現在も北九州市に拠点を置きながら、地元のアーティストたちに影響を与え続け、現代のアートや社会運動にも脈々と受け継がれている。