作品コード : 8975

鴨居玲

「バンジョー」

油彩
F10号
53 x 45.5 cm
1985年作

 本作は「Rey Camoy KOBE」とサインがあり、没年となる1985年に神戸のアトリエで制作されたものだ。髪型の特徴などから、バンジョーをひき鳴らす鴨居自身の自画像と思われる。唄っているのか、苦悶するような悲壮感のある表情が印象的だ。
 晩年の代表作 『1982年 私』 以降、鴨居は自画像だけを執拗に描き続けた。学生時代から晩年まで、画業を語る上で鴨居の自画像は外すことができない大切なテーマだ。自分自身を見つめすぎるほど見つめて、死と隣合わせの"生"を追い求め、描き続けていた。本作が描かれた年、鴨居は自ら命を絶った。絶望と希望のはざまでもがきながら、その人生を華麗に駆け抜け、自ら幕を下ろした孤高の画家は何を見つめ何を私たちに伝えたかったのだろうか。

鴨居 玲 (かもい れい)
生と死、老い、孤独、愛といった人間の普遍的テーマを画題として描き続けた。最後は自殺未遂を繰り返した末に心臓病と排ガスにより57歳で没。

1946年 金沢市立金沢美術工芸専門学校(現在の金沢美術工芸大学)に入学。宮本三郎に師事する。
1950年 二紀会同人に推挙される。
1952年 芦屋・田中千代服装学園の講師となる。
1959年 渡仏(1958年という説もある)。
1961年 帰国。二紀会を退会する。
1964年 創作に行き詰まり、南米、パリ、ローマを渡り歩く。
1965年 帰国。
1967年 二紀会同人に推挙される。
1968年 初の個展。この時、下着デザイナーの姉・鴨居羊子を通じて知り合った小説家・司馬遼太郎と親交をもつ。
1969年 昭和会賞と安井賞を受賞。
1971年 スペイン・ラ・マンチャのバルデペーニャス村にアトリエを構え、制作に没頭(~74年)。
1984年 金沢美術工芸大学の非常勤講師として講義。
1985年 神戸市の自宅で排ガス自殺により没。享年57。

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